他の追随を許さない信念と技術

剣道の技術の向上にともない、竹刀を大きく、早く、強く振れるようになります。そのため、より繊細な指の動きが要求され、当然、その動きを「表現」できる甲手が要求されます。

親指と人差し指の間の十分な空間がもたらす効果としては、竹刀を大きく振り上げた時に、竹刀と甲手が密着し、「素手で竹刀を振る」という実感が得られます。今日までの鐵型をさらに進化させ、親指と4本の指のバランスをより深く研究しました。

竹刀を容易に握るためには、4本の指が甲手の中で無理なく動かせることが重要ですが、甲手を大きくするだけでは手の内の革が余り、かえって余計な力が入るという弊害も出ます。手に最も適したサイズの中にゆとりがあることが必要です。

型自体は若干大きくなりましたが、手を十分に包み込むことになり、仕上がりは逆にコンパクトになりました。

手首の飾の方向性についても今回は深く研究しました。手首は柔らかければ使いやすい。そのために材料を減らし、鹿毛を少なくして作ることは、道具としての信頼性を損ねてしまいます。頑強の中での柔軟性。一見矛盾しているようですが、これを実現することことが究極の道具造りであると考えます。今回、飾の方向性を変えることにより実現しました。永年の研究の中から生まれた「究極の甲手」です。

剣道には各々個性があるように、道具に対する要求も多種多様です。「これが正しい」とはなかなか言い切れません。これからもより良い道具の研究と開発を続け、皆様のご感想をお聞きできれば幸いです。

東京正武堂オリジナル甲手の歴史